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by a_roofbeam
あくまでも個人の意見で、押し付けるつもりはないが、ティックマークが大嫌いである。

小学生の頃、読書少年だったぼくは図書館が大好きで、ある日ガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』という本を借りてワクワクして読み始めた。
最初のページを開いた瞬間、そこに鉛筆で

「犯人はXXXだ!」

と落書きがしてあり、幼いぼくは怒りと喪失感に打ち震えた。貴重な推理小説の名作の一つを、完全に無にされたのである。

これと同じ怒りと虚しさを、30年後の備中長屋坂で経験した。

カウントダウンというルートの核心部を超えて悪いクリップができずにもがき、落ちたくないと慌てふためいたぼくの目に顕著なティックマークが飛び込んできて、反射的に手を伸ばすと目立たないくぼみに指がかかり、ぼくの体は止まった。

いつか経験したあの怒りと虚しさが蘇ってきた。

ぼくの楽しみは奪われたのだ。誰かがなんの気なしにつけた、白いマーキングによって。
ぼくは印のついたところを順番に保持するスポーツがしたいわけじゃない。自分で好きなように岩を触って、見つけたホールドで好きな動きで登りたいのだ。
まあ自分もチョークを使い、チョーク跡には目をつぶっているのだけれども、ティックマークは人工的で萎える。

ティックマークはもはや一般化してしまい、何が悪いのかよくわからない、という仲間もいるので、こんなひねくれ者の意見も心に留めてほしい。
しないでくれ、とは言わないが、本当に最小限にして、終わったら消してほしい。

そうは言いながらも、そもそも公共のルートに自分だけの目印をつける行為は、図書館の本にメモをするのと変わらないように僕は感じる。
岩質によってはブラッシングしてもきれいに消えないことも多いし。

お、そういえば俺はすっかり黄色い部屋の犯人を忘れているぞ、、



# by a_roofbeam | 2023-12-23 23:35 | クライミング
(注)2013年の記録の続きです。

ノーズを敗退して地上に降り、現実に帰った我々はまあ、うなだれていても仕方ないので、翌日はレストして、次の日にイーストバットレスというエルキャプの右端のほうを登るクラシックなマルチをやろうということになった。

ノーズで散々な目にあった僕らは、もはや普通の感覚が失われており、イーストバットレスを登るために前日にとりつきに水を6リッターもデポするという、知ってる人にとってはジョークでしかない行動に出た。

うまく例えるのが難しいが、小川山のセレクションのとりつきに2リッターのペットボトルを2本、前日にデポするようなもんだ。。。

登攀当日、2ピッチ、アホみたいに重たい水入りのザックで登って、目の覚めた我々はまた、盛大にペットボトルの水をぶちまけ始めた。

ヨセミテに謎の日本人が現れ、いたるところでミネラルウォーターを荷揚げしては空中に撒いている。。(笑)

そんなこんなで登り切ったイーストバットレスはもちろんクラシックな良ルートで、ぼくらはエルキャプの右端には立つことができた。

何とか気持ちは落ち着き、カリービレッジにまたピザでも食いに行こう、と出かけることにした。
ピザ屋に向かう気持ちの良い道を、幸せそうな人々に囲まれながら歩いていると、明らかに観光客とは雰囲気の違う年配のヨレヨレのバム的なクライマーに声をかけられた。やせた体型、きれいとはとても言えない身なり、長く伸びた白髪、やさしさしか表に現れていない表情で彼は僕に語りかけてきた。

which route you hit today?   今日はどこを登ったの?

イーストバットレスだよ。とても良かったよ。  そんな感じで当りさわりのない会話をその老人と重ねて別れた。
そのままピザ屋に向かい、なんということもなくピザを注文し、出来上がったらブザーが鳴る、日本のショッピングモール的な奴の数倍でかいのを渡される。

カリービレッジの素敵なピザ屋のテラスでは、そこか隣のバーで購入した飲み物しか飲んではいけない決まりになっているが、ビールが1000円位するので、大きな声では言えないが隣のスーパーに缶ビールを買いに行く。

スーパーのビールコーナーでどれを買おうか迷っていると、後ろからいきなり

Hey, you hit same route!  俺らは同じルートを登ってるじゃないか!

さっきのオールドクライマーに声をかけられた。彼のポケットにも、ピザ屋の馬鹿でかい呼び出し器が入っていた。

僕らはニコニコでビールを選び、そこでまた別れた。

僕はボロボロ泣いてしまった。そして一つの確信が生まれた。

カリービレッジのピザと缶ビールでこれほど幸せでいられる限り、僕はいつまでも幸せでいられる。

もちろんこれは比喩でしかない。自己満足でしかない。だけどこんな素晴らしい自己満足に出会えただけで、僕の人生は意味があった。
歩いてたどり着ける頂上に、わざわざ壁を登ってたどり着こうという、壮大な自己満足の趣味に出会ってしまい、それが素敵なんだ。

呼び出し器がアメリカンな爆音で鳴り始めたので、僕は涙を拭いて相棒の待つテラスに戻り、アメリカンなピザを受け取って楽しい反省会ディナーが始まった。

僕は今でもあの缶ビールを飲み続けている。

あのオールドクライマーみたいに、ヨレヨレの感じになっても、きっとあの缶ビールを飲み続けている。そしてニコニコ笑っている。


# by a_roofbeam | 2021-04-08 08:14 | クライミング

映画を作っていた

今はほとんど映画を見ることもなくなってしまった。最後に映画館に行ったのがいつか思い出せない。
だけど大学生のころは映画サークルに所属していわゆる8ミリ映画を作っていた。本当に楽しかった。

今この時点で8ミリ映画という言葉を聞いて、正確にそれがなんであるかわかる人はもはや老人の部類だろう。フィルムという言葉ですら死語になりつつある今だ。

その当時でもビデオは当然あったのだが、なぜか人はビデオで映画を撮らなかった。このことを今僕ははっきり説明できない。今振り返ればアホみたいにお金がかかる8ミリフィルムで映画を撮ることが正義だったのだ。

8ミリフィルムなんて、その当時でも興味ない人にとっては完全にすたれたメディアであった。だって巷には普通にVHSのビデオカメラがあふれており、映像を撮るのはVHSのビデオが当たり前の時代であった。僕自身8ミリフィルムなんて映画サークルに入って初めて知った。だって父親はパナソニック(当時ナショナル)の販売会社に勤務していたので、小さなころから家にはVHSのビデオカメラがあった。

もはやフィルムというものが絶滅しかけている時代に、8ミリフィルムの説明をするのはなかなか不毛な感じになっているのも知れない。僕自身映画サークルに入って一番ビックリしたことは、3分の映像を撮るために、フィルム代と現像代を合わせて3千円ぐらいかかるという驚愕の事実だ。

つまり、1時間の映画を撮るためには最低でも6万円、実際は多大な没フィルムが生じるので、その数倍かかるということだ。

しかもフィルムを売っているのはごく限られた店舗で、インターネットなどない時代、フィルムの購入も現像も新宿に行かなければ何一つままならない時代だった。僕がいた時代は、コダックが完全に撤退しつつあり、富士フィルム一択になっていた時代である。

もちろん自分が映画を撮りたいと思えば、自分でその3分三千円を捻出するしかなく、まあ分かりやすく言えば、一時間バイトして一分間映画が撮れる、ということになる。

その地道に稼いだ1分が、露出を間違えれば簡単にゴミになってしまう。露出ってあの、今の時代には変な言葉になってるかもだけど、、、
ようは三千円払ってすべて真っ暗な映像しか取れてない、とかいう悲しいことが、昔はあったのだよ。

フィルム云々の話は置いても、僕らレベルの映画を撮るにも、一番重要なのはプロデューサー力なのだ。

これだけは僕みたいな素人でも力説できる。どんな良いイメージが浮かぶ天才でも、プロデューサーに恵まれるか、自分がその能力がなければそれを実現できない。
プロデューサー力というと大したものに思えるが、実際のところ、自分で映画を撮ろうと思うと調整力にすべてを費やす必要があった。

何しろ、必要なすべての人員をその場に揃えなければいけない。主演女優が急にバイトが抜けられなくなったら、そのほかすべての役者やスタッフは無駄足になってしまう。今みたいにスマホなんてない、家電と留守電がすべての時代に、すべてのスタッフの時間を確保することがどれほどの重労働か、わかってもらうのは難しいだろう。

そんな苦労を経てみんな集まって撮影が終わり、露光を間違って数万円のフィルム代がパーになったら、あなたは映画撮影を続ける意思が保てるだろうか???

でも僕らがそんな泣き言を言いながら映画を撮っても、早稲田や日芸の映画サークルは僕らの数百倍優れた映画を量産していたのだった。

一体何なんだろうと思っていた。かけていたもんが違ったんだろう。

それでも僕は短い映画(といえるようなものかは分からないが)を2本撮れたし、一本の長い映画を脚本監督して途中で投げ出したが、本当に素晴らしいと今では思える。
あの頃の仲間は永遠に僕の仲間だ。映画を作るものの切なさが、今でも僕はわかる。








# by a_roofbeam | 2021-03-06 23:45

瀬戸内国際芸術祭 2019

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1番楽しみにしていた男木島のタコの天ぷら。おじさんが寂しそうに、三年くらい前からタコが全然取れなくなってなぁ、と言っていた。

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男木島の新しい作品で良かったもの。
全般的に、毎回参加してきた人間には目新しい作品がどんどん少なくなってきている。まあ、仕方ないことかもしれないが…

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男木島図書館のカレーが今回のベストご飯!


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夜は高松で骨付鳥

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愛媛出張を挟んだので鯛めしも食えた。これもすごく美味い!

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個人的に今回のベストは四国村だった。こんなに素晴らしいバリエーションのある建築群が四国だけで存在していたなんてにわかには信じがたい、想像以上の施設だった。今まで何回も前を通りながらスルーしてきたのがアホらしく思える。ここに作品を展示することで見るきっかけを作ってくれた芸術祭に感謝。

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豊島美術館前の世界一の坂道は何度訪れても素晴らしい。だけど豊島美術館はもはや何回も見たので今回はスルーした。

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そのちょっと上の分かりにくいとこにあるアオゾラと言う名のお店が今回のベストロケーション! この景色でビールが美味い😋


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この海のレストランも同様に素晴らしいロケーション。

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直島で目新しかったのはここぐらい。

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高松に戻ったら何やら楽しげなイベント。

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屋台で飲んで食べて、楽しい夏が過ぎた。

# by a_roofbeam | 2019-08-17 22:07 |
ルフトハンザの機内エンタでたまたま聴いて、軽くどっぱまりしてしまった。

グレツキは名前ぐらいは知ってる、という作曲家だったが、ググったらこの曲は現代音楽では結構なヒット曲らしい。

すごく静かにはじまり、似たようなメロディーを繰り返しながら、あくまで静かにソプラノで盛り上がり、やがてまた静かに終わる。

まあ、うまく表現できないが、クラシック音楽に興味ない人でも、ハマる人はいるんじゃないでしょうか。ただしいきなり第1楽章から試聴するとなんじゃこりゃ、となるかもしれないので第2楽章から聴いてみるのも良いと思います。




# by a_roofbeam | 2019-08-01 02:49 | 音楽・読書