ヨセミテツアー 2013 ノーズその2 教会の鐘が鳴り響く
2013年 10月 23日
シックルで、よく眠れないまま起きる時間になった。
回復感もそれほどない。
もっと早く出発するつもりがうだうだしてしまい、ポータレッジをしまったり、
あれやこれや手間取ってるうちに、フィックスを上がってくるパーティーがいて、焦ってしまう。
アメリカ人の二人は、30リッター程度のザックひとつで現れた。今日はエルキャプタワーを目指してるというから、そこまで行ってラペルダウンするのか?、と聞いたら話が噛み合わない。よくよく聞いたら、2デイで抜けるということらしい。
おいおいそのザックにホイチョイカプセルでも入ってるのか?
準備にあたふたしているぼくらは彼らを先行させた。
ここでまたひとつ認識を改めることになる。ノーズを2デイで抜けるなんて、とんでもない強いクライマーだけの世界と思っていたら、彼らは6ピッチ目で普通にテンションを入れていた(まあザックが重いんだろうけど)。
このへんから、徐々に何かが違うと気づきはじめる。
ぼくらはそこそこオーソドックスなスタイルで臨んでいるつもりだったが、
ことによるとすごく時代遅れなトライをしてるんじゃないだろうか、
そんなことを考え始めた矢先に、はるか上方から、教会の鐘が遠く、鳴り響いてくる。
ストーブレッグのあたりにはられていた別パーティーのポータレッジが撤収を始めたようだ。
アルミのごついパイプがカランカランと岸壁にあたって、遠い鐘のように聞こえてくる。
シックルからの2ピッチはぼくがリードしたが、本当にリードでよかった。
人が簡単に登れる3級の岩は、ホールバッグには鬼が満載の地獄になる。セカンドは50キロ位上のズタ袋を抱えながら上がってくるハメになる。
そしてビレイ点ではお約束のようにロープが絡む。
いろんなサイトを見て頭のなかではスッキリしたビッグウォールシステムをイメトレしてきたつもりだが、そんなことはお構いなしに現実のロープは絡む。
ストーブレッグへの大きめの振り子トラバースまであと少しという相棒に、
「悪い、下でロープがクラックに挟まった(;´Д`)」
ビレイ器をセットして5メーター以上ラペルし、引っかかったロープを回収してさばき直す。
その間相棒は日の当たる壁に30分以上ただぶら下がっている。やつの喉の渇きは痛いようにわかる。
「俺たちビッグウォールの悪い例をまさに実演してるみたいだな。」
たぶんドルトホールに2時間ちかくいただろう。ストーブレッグを登ってる相棒のコールは聞こえるが、姿は全然見えない。苦戦してるようだ。
やっとビレイ解除の声を聞き、きつい空中懸垂とロワーアウトを経て、スッキリした壁の美しいクラックを眺めながらユマールした先にはすっかりやつれ果てた相棒がいた。
ビレイ点でぼくもやつも、完全にスタンディングノックアウト的な感じだった。
次の行動が起こせなかった。
相棒がビレイ点と思っていたアンカーは、ドルトから地面まで続いているラペルポイントのひとつで、
ぼくらははからずも敗退の道に迷い込んでいた。
そして、今朝鐘を鳴らしていたパーティーが大荷物とともにぼくらの上から下降してくる。
はやくも物語が終わりそうなフラグが続々立ち始めた。
彼らは憔悴しきっていた。もう考えることができなくなったので敗退すると言っていた。
ぼくらもドルトにたどり着けるか不安に思っていることを言うと、ここにポータレッジを張ってドルトまで空荷でフィックスしたらいい、昨日ぼくらもここで泊まった、と教えてくれた。
これを聞いた瞬間、つくづくホッとした。もうこれ以上荷揚げしたくない。
同時にぼくらも彼らを一日遅れでトレースしてるんだろう、という直感も生まれた。
重い荷物、ポータレッジ、遅い行動、明日は同じようにここをラペルダウンしてるんだろう、、、
彼らが下って行くと、ぼくらは夕方の鐘を鳴らし始めた。
とても幸福だった。ポータレッジの上で憔悴して、エルキャプメドウが少しずつ夕日の色になるのを眺めながら、昨日よりとても満ち足りた気分で晩飯を食べてお茶をした。
登るのをあきらめると、なぜこんなにも幸福で満ち足りた気分になるのだろう?
回復感もそれほどない。
もっと早く出発するつもりがうだうだしてしまい、ポータレッジをしまったり、
あれやこれや手間取ってるうちに、フィックスを上がってくるパーティーがいて、焦ってしまう。
アメリカ人の二人は、30リッター程度のザックひとつで現れた。今日はエルキャプタワーを目指してるというから、そこまで行ってラペルダウンするのか?、と聞いたら話が噛み合わない。よくよく聞いたら、2デイで抜けるということらしい。
おいおいそのザックにホイチョイカプセルでも入ってるのか?
準備にあたふたしているぼくらは彼らを先行させた。
ここでまたひとつ認識を改めることになる。ノーズを2デイで抜けるなんて、とんでもない強いクライマーだけの世界と思っていたら、彼らは6ピッチ目で普通にテンションを入れていた(まあザックが重いんだろうけど)。
このへんから、徐々に何かが違うと気づきはじめる。
ぼくらはそこそこオーソドックスなスタイルで臨んでいるつもりだったが、
ことによるとすごく時代遅れなトライをしてるんじゃないだろうか、
そんなことを考え始めた矢先に、はるか上方から、教会の鐘が遠く、鳴り響いてくる。
ストーブレッグのあたりにはられていた別パーティーのポータレッジが撤収を始めたようだ。
アルミのごついパイプがカランカランと岸壁にあたって、遠い鐘のように聞こえてくる。
シックルからの2ピッチはぼくがリードしたが、本当にリードでよかった。
人が簡単に登れる3級の岩は、ホールバッグには鬼が満載の地獄になる。セカンドは50キロ位上のズタ袋を抱えながら上がってくるハメになる。
そしてビレイ点ではお約束のようにロープが絡む。
いろんなサイトを見て頭のなかではスッキリしたビッグウォールシステムをイメトレしてきたつもりだが、そんなことはお構いなしに現実のロープは絡む。
ストーブレッグへの大きめの振り子トラバースまであと少しという相棒に、
「悪い、下でロープがクラックに挟まった(;´Д`)」
ビレイ器をセットして5メーター以上ラペルし、引っかかったロープを回収してさばき直す。
その間相棒は日の当たる壁に30分以上ただぶら下がっている。やつの喉の渇きは痛いようにわかる。
「俺たちビッグウォールの悪い例をまさに実演してるみたいだな。」
たぶんドルトホールに2時間ちかくいただろう。ストーブレッグを登ってる相棒のコールは聞こえるが、姿は全然見えない。苦戦してるようだ。
やっとビレイ解除の声を聞き、きつい空中懸垂とロワーアウトを経て、スッキリした壁の美しいクラックを眺めながらユマールした先にはすっかりやつれ果てた相棒がいた。
ビレイ点でぼくもやつも、完全にスタンディングノックアウト的な感じだった。
次の行動が起こせなかった。
相棒がビレイ点と思っていたアンカーは、ドルトから地面まで続いているラペルポイントのひとつで、
ぼくらははからずも敗退の道に迷い込んでいた。
そして、今朝鐘を鳴らしていたパーティーが大荷物とともにぼくらの上から下降してくる。
はやくも物語が終わりそうなフラグが続々立ち始めた。
彼らは憔悴しきっていた。もう考えることができなくなったので敗退すると言っていた。
ぼくらもドルトにたどり着けるか不安に思っていることを言うと、ここにポータレッジを張ってドルトまで空荷でフィックスしたらいい、昨日ぼくらもここで泊まった、と教えてくれた。
これを聞いた瞬間、つくづくホッとした。もうこれ以上荷揚げしたくない。
同時にぼくらも彼らを一日遅れでトレースしてるんだろう、という直感も生まれた。
重い荷物、ポータレッジ、遅い行動、明日は同じようにここをラペルダウンしてるんだろう、、、
彼らが下って行くと、ぼくらは夕方の鐘を鳴らし始めた。
とても幸福だった。ポータレッジの上で憔悴して、エルキャプメドウが少しずつ夕日の色になるのを眺めながら、昨日よりとても満ち足りた気分で晩飯を食べてお茶をした。
登るのをあきらめると、なぜこんなにも幸福で満ち足りた気分になるのだろう?
by a_roofbeam
| 2013-10-23 21:55
| クライミング